おらぶろ

5月までうごで声優活動しているオラが、5月後もだらだら活動する場所。おてやわらかにどうぞ。

【俺キタ】さようなら。おはよう。【4】

初春の清々しい朝ですね…!

なんて思ってみても俺の心の中は曇天だった。

重苦しい…放課後がヤダ…授業受けてさっさと帰りたい…。

ふらふらー。そんな足取りで廊下を歩いていると、ドンっと曲がり角で誰かと衝突。衝撃が俺を襲う。

「!?」「きゃっ」

だがしかし相手は小柄な女子生徒だったようで、結果は俺ではなくて女子生徒がしりもち着くこととなってしまった。

どさっと地面に着く音。

人がジャンプして着地するときにかかる圧は最大で車10台以上と聞いたことがあるから。いま彼女はどれぐらいの…と違う。

今はそんなことを考えてる時じゃなかった。

「大丈夫ですか」と声に出しかかって、うっと詰まった。

…「大丈夫ですか」と聞いて、それでどうするんだ…

他人とは必要最低限としか関わったことのない俺の対人スキルは決して高くはない。

今の今までこういう状況になったことはなし…。

だがほっとくなんて論外だ。俺はその人のもとへ寄ると声をかけた。

「大丈夫ですか…?」

「あっ はい…」

女子生徒は自力でなんとか立ち上がったが、ふっと力が抜けたように、再び倒れそうになる。が、俺は反射的にそれを支えた。

「す、すみません…っ」

「いや、気にしないで下さい…えと、本当に大丈夫ですか…?」

「はい…」

いやどう考えても大丈夫じゃなさそうなんだが。

よく見ると女子生徒の体はふるふると震えていて、心なしか唇も薄紫がかっている。

「…ちなみに、どこへ向かってるんですか…?」

「……保健室…」

保健室。この曲がり角を曲がっていけばすぐに着く場所だ。

…俺はいつも早朝に来ていて今は校内の人通りが少ない頃。それなら…

「あの…もう大丈夫です…すみません」

そう女子生徒が俺から離れようとした時。

「!? きゃあっ」俺は彼女を横抱きにすると黙々と廊下の来た道…つまり保健室を目指していく。

「あのっ だ、大丈夫です!; 離してください…!;」

「ひ、一人で行けますから!;」

「あ、あの…!」「ああもううるせーよ!少し黙ってろ…!」

人に気付かれたらどうするんだよ!

ぶっちゃけこっちの方が本心だった。

俺はこんな状況になったことがなかったから分からないけど、あのままふらふらしてる相手を見過ごすわけにもいかないだろう。人目にさらされないうちに俺は早足で保健室へと向かう。

「え、えと…」

困ったように返す女子生徒だったがやがて何も言わなくなった。

 

「あ、ありがとうございます…」

「おう、じゃあな」

知らない間に当初の敬語ではなくなっていたが、なんとか女子生徒を保健室前で下すと俺は今度こそ教室へと向かう。

…そう言えば、さっきの女性生徒。顔はなかなか窺えなかったが。かなり整っていた方だと思う。

背中辺りまでウェーブがかった黒髪に小柄な体系。輪郭もしゅっと整っていた。だが……

「なんだろな…この違和感は…」

悩んでみるが何も浮かばない。悩みぬいた挙句についた教室の戸を開けるとそこには、

 

「おお!本田くん!おはよー!」

「…………」

 

がらがら。俺は再び開けた戸を閉めた。

 

…さようなら。

今まで俺の安息の時間だった誰もいない朝の教室。

…そしておはよう。

扉の向こう側のド天然アホ。