おらぶろ

5月までうごで声優活動しているオラが、5月後もだらだら活動する場所。おてやわらかにどうぞ。

【俺キタ】アオイ【5】

「本田くんっ」「…」「本田くん?」「…」「本田くぅうん?」「…」「ほほほほーんだくーn」「うるせえ!」

「…無視したのはそっち…」

放課後の廊下で、むぅっと口を尖らせて拗ねる相川。俺は相川を見ようとはせず、言葉だけを投げかける。

「なんで一緒のクラスなんだ…」

「ああっ そのこと?いやだなぁ本田くん、クラスメイトの名前ぐらいいい加減覚えなよっ」

最初会った時「新入生の方ですか?」と聞いてきた奴が何を言うか。

「…めんどくせえんだよ」

「本田くんは色んな事がメンドクサイんだねっ」

一見嫌味のように聞こえるが、相川の今までの天然発言で決してそうではないんだと分かる。

「知るか、それより、ホラ」

「あ、着いたね!部室だあ!今日は二年の先輩もいるんだよね!わーい!」

隣で万歳!と両腕を挙げる相川をしり目に、俺は部室の戸を開けた。

「こんばんっ わああ!!!」

「ほっ 本田くん…!?」

衝撃。今日で二度目だ。俺は今度こそ床に倒れる。軽く相川が悲鳴を上げたが、そんなことより…

(だ、誰だ…!?)

戸を開けた瞬間誰かが俺に飛びついてきて倒れたのは明らかなのだが、その『誰か』が問題だった。部長ではない。明らかに『男』だったから。

「え、な、ちょ…っ」

「諒介くん…!会いたかったよー!!」

(だから、誰…!?)

俺の脳内は軽くパニックである。ひたすら俺にしがみついているこの男子生徒は誰だ?これが二年の先輩…?でもこんな人と知り合った記憶ないぞ??

「おい青伊。いい加減退いてやれ」

部室の中の方から部長の声が聞こえた。そうだ、確かに今の俺は部室の前で謎の男子生徒と倒れているということになる。

「部長…はぁーい…」

男子生徒は渋々、という様子で俺から退くと、俺の方を覗きこみ「諒介くんもいつまで寝てるの…?」と聞いてきた。いや、お前がこうしたんだろ。

俺も制服についた埃を払いながら立ち上がると、目の前の男子生徒と正面から向き合う。

「…なんか見たことあるような…」

くもりのない黒髪に若干女の子にも見える線の細い輪郭…んん。やっぱどっかで…

「あ、やった!諒介くんなら気づいてくれると思ってたんだ!」

男子生徒は目を輝かせながらそういうと部室のソファから女子用制服を…て、え?

「改めまして、初めまして諒介くん。私は、アオイって言いますっ」

………もしかして…

「…あの、朝の…?」

「そうだよっ 朝キミにお姫様抱っこしてもらった!二年の青伊陣(あおい/じん)です!」

「え、ええええええええ!!?」

俺より一つ年上の先輩は、少女のように笑った。