【俺キタ】にしはる【6】
にこっ。そんな形容が当てはまる笑い方をする目の前の先輩に、俺は数回瞬きをすると、静かに問うた。
「え……男…?」
「? うん、そうだけどっ?」
にこにこ。
…待てよ、それじゃあ、朝この先輩を運んだ時に感じだ違和感って…
「ちょ、ちょっと…本田くん?お、お姫様抱っこって…本当ですかっ?」
違和感って…もしかして…
「――が、なかったから…?」「本田くん…!?;」
あ、もしかしたら今オレとんでもないことを口走ったかもしれない…;
「…もう…諒介くんったら…大胆なんだから…」「本田くん!!?;」
なんてふざけ半分で俺にとって死活問題にもなりうる発言をする先輩(♂)に俺は顔面が青ざめるのを認めざるおえなかった。
相川なんてふらふらしてる…ああああ、俺もう学校行かない…
その時、
「おいお前等!部室の扉をふさぐな!入れないだろう馬鹿め!!」
なんて明らかに俺たちのことを指した罵声が飛んできた。やけにトーンの高い声からして、女子生徒、ましてやこの帰宅部の先輩だということは容易に想像できた。
「…あ、すみませ…」俺は後方から聞こえてきた罵声に、キチンとした対応を取るべく後ろを振り向いたが……
「あれ、誰もいねえ…?」
そこにあるはずの生徒らしき姿は見られず、そこにあるのは無難な壁のみ。
「!? おい!お前!こっちだこっち…!」
?? 誰だ…?どこにいる?
「…?」「本田(諒介)くん…下…」
先輩と相川が声をそろえて俺の下方を指さした。…ん?
俺はゆっくりと視線を下へ降ろしていく。
するとそこには、小さな…小さな女子用の制服に身を包んだ生徒が立っていた。
「やっと気づいた…!お前、身長大きすぎるぞ!縮め!!」
…見るからに生意気だ。そしていかんせん褒められてるのか?俺…
「え、いや…すみません…」
とりあえず先輩らしいので、俺は道を開ける。ずかずかと入っていく先輩(♀)。
そして…
「アオイー!お前、今日の朝『あの格好』して急に消えたから、心配したんだぞ!」
『あの恰好』とは、つまり朝この先輩がしてた。女装のことだろうか…
するとアオイと呼ばれた先輩は少し恥じらいながら(オレ的にはそう思いたくはない)俺を見ると、照れたようにつぶやく。
「諒介くんに……助けてもらったんだ…っ///」
おい、照れるな。照れるな…!;;
「あ…おい…? 諒介って…?」
「あそこに…」
「………」
「うっ」
俺のことをにらんだ俺より小さい先輩のあの形相は、きっと一生忘れることはないだろう。
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真「私の出番はどこだ。完全空気なんだが」
オ「ごめんなさいいいい!!(スライディング土下座)」