はじまりのお話。
「あーうん、そうだよ。だから、部活は強制なんだ…」
夕暮れ時の学校で、そんな話し声が響く。辺りは静まり返り夕日がオレンジ色の背景をつくりだしていた。
「…大丈夫。強制っつっても『帰宅部』はあるみたいだからな…ああ、わかってるよ。」
じゃあな。
体育館裏で携帯片手に立っていた男子生徒はそういうと親指で画面をタップし通話を終えた。そして振り返るとひとこと。
「…めんどくせぇ」
――――――――――――
本田諒介の人生の全てをひとことで表すとしたらそれは『無関心』、あるいわそれに近いものだろう。
友好関係を築くのにも『無関心』
趣味なども特になく、これまた『無関心』
……当然色恋にも、『無関心』
例外として勉強や、唯一の身寄りである妹には無関心…という訳にもいかないが。
でもそんな彼に転機がおとずれた。
中学生時代には所属していなかった部活というものに、自分も所属しなければいけなくなったのだ。(無論理由は全生徒部活制だったから)
そして諒介はこう答えを導き出した。「それなら帰宅部だ」と。
部活動を強制とはいえさせる制度のくせになぜ帰宅部なるものが存在しているのか。謎はあるがあるのならばお世話になろうではないか。そう考えていた 。
「…ここ、か」
簡素なプレートに【帰宅部】とだけ書かれた扉。
(…帰宅部に部室があるのも違和感あるけどな……)
諒介はドアノブをにぎり、意を決しひねる。
――がちゃり…
鈍い音が耳に響いた。そして…
「…?」
瞬時に?マークが浮かぶ。誰もいないのだ。
部員の一人や二人いてもよいのではないか…?そう思った時だった。
「新入生の方ですか…?」
「!!!?」
すぐ後ろから声が聞こえ、慌てて振りかえればそこには女子生徒。
「えっ あ、ごめんなさい…驚きましたか…?」
右肩から垂れる大きな三つ編み。キレイな黒髪が揺れる。
知的さを思わせるその容姿に、少なからず目を奪われる。
そしてやけに低姿勢なその態度に、少しだけ冷静を取り戻した諒介は言った。
「…そうだけd「本当!?よかったぁ」
…は…?
「もしも先輩とかだったらどうしようって思ってたんだあ!…ふぅ、よかった同級生の人で…」
そういい額を拭う素振りを見せる女子生徒。
なんていうか…苦手なタイプだ(だいたいの他人が苦手←)。
「………」「あっ ねえ、君の名前は…!?」
あ。と声を漏らすと女子生徒は再びずぃっと顔を寄せ、言った。
「ごめんね!挨拶は聞く前にこっちから言わないとね!
私は……相川芽衣子っていいます!!」
よろしく。
そう差し出された手に、俺はただ戸惑うだけだった。
【続く】